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おしゃべりな埴輪

以前話題になったテレビドラマ(原作は漫画)で、主人公が仕事上のある事故に巻き込まれ記憶喪失になったことをきっかけに家族の素顔が認識できなくなり、家族一人一人が白い仮面を被っている姿に見えてしまうという話があった。白い仮面の顔は動かない無表情なものだが、少し笑っている顔にも見える。そのことが、余計に主人公の置かれた背筋が寒くなる様な立場を浮き彫りにしていた。

 

私はドラマの白い仮面からはどうしても日本列島各地の古い地層から出土した例の人型埴輪を連想してしまう。埴輪にもし人格があるとすると、勤勉、控えめで自分の意見を表に出さない——そんな人物像か、半面その目や口は空虚な穴で、肚の底では何を考えているかはわからない。

 

ところで<しだみ※野焼き>の埴輪たちは、古代の埴輪とはかなりかけ離れた人格を持つ様だ。あるものは、大きくあいた口から火を吹きそうだし、あるものは両手を振り踊り出し

いる。怒りや驚きを顔全体で表している者もいる。彼らは、慎しくもなく、自分の言いたい事を抑えて大人しく振る舞おうとはしていない。

 

<しだみ※野焼き>の埴輪たちは、しかし一堂に集まったその様子を観ると奔放なエネルギーに満ちていながら、どこか柔らかでユーモラスな気分さえ湛えている様に見えてくるから不思議だ。