煙のような彫刻
今回、埴輪の成形にかけたのは2日間。1日目に陶芸用粘土でベースになる形を作った。この時点で既に手も付け目も開けらて基本的なシルエットが出来上がっていた。一週間をおいて衣服など装飾的要素を加えることになった。作業が終わって、いくつかの作品を眺めると、細部というより胴体の特定の例えばお腹のような部分がさらに粘土で大きく盛り付けられ、ほとんど前回作られたシンプルなシルエットを無視してボディの上に別のボディのパーツが重ねられていた。もとの形と付け加えらた形が溶け合わず、何となく居心地の悪さを感じてしまう。ところでこの稿をしたためながらファッションデザイナー川久保玲の近作を思い出した。彼女のデザインした服は人体の自然なシルエットに反発するかのように思いがけない部分にコブのような形が埋め込まれて、人の美に対する価値観に疑問を呈するような挑発的な仕事だったが。
その後、約2週間の自然乾燥を経て、昨年同様野外で野焼きという素朴な手法で作品を焼成することになったが、果たして木で鼻を括ったとも言える見た目の違和感は焼成後もやはり変わらないのかどうか。結論から言うと、製作途中の1週間という時間のギャップが、最後の焼成というプロセスを経ていっきに埋められ、異質なシルエットが強い力で結合され一つの新しい人の形にまとめ上がっているのだった。
墨色の埴輪は、まるで煙のように変幻自在に形を変え色を変えて生まれた。
コメントをお書きください
石黒まり子 (月曜日, 19 9月 2022 21:20)
埴輪も宇佐美さんの文章も面白かった。
「墨色の埴輪」って字面も響きもいいですね。他の埴輪たちも見てみたい。