個性と言われる時、集団から切り離して、1人の人物の営みに目
を向けられがちだが、集団の中でお互いが魅力をより一層発揮するような個性の存在をここにある埴輪は気づかせてくれる。
一見アクが強く、お互いに激しい不協和音を生じさせているようで、全体として独特の調和を体現しているのは、そこに通奏低音のように響き続けているものがあるからだろう。ただ、それを一言で言い表すのは難しい。
ヒントとなるのは、製作時に見られた作者たちの手の柔らかい動きである。大胆で、力強く見えても、決して力ずくで素材を押さえ込んだ造形ではなく、ソフトに触れ、扱っている姿が記憶に残っている。その印象は世界への柔らかな気遣いの現れとして、出来上がった埴輪からも十分受け取れるに違いない。
"野生を纏った埴輪"は意外にもやさしい手から生まれた。これらの人形には、絶妙なユーモアの感覚が漂っていることも追記しておきたい。
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